1.アスベスト系
アスベストとレジン材を主成分として形成したパッドです。アスベストは1995年に使用禁止になりましたので今はこのパッドはありません。
2.ノンアスベスト
読んで字のごとし、アスベストを使わずに形成したパッドです。グラスファイバ、アラミド、セラミックス、アルミナ、スチール、銅などの材料を主成分とします。
アスベストを含まない材質の総称なので、厳密にはここからさらに4つに分類されます。
2-1.NAO材
特に無機系の材質を使わないものを「NON STEEL NON ASBEST ORGANIC」の頭文字をとって、NAO(ナオ)材といいます。
主成分にはスチール系素材を使わずに、グラスファイバ、アラミド、セラミックス、アルミナ、銅などです。
一般的な国産車の純正品はこのNAO材が主流です。
効きや耐熱性はそこそこですが、ローターを荒らさない、鳴きが少ないなどの長所が重宝されています。
2-2.ロースチール系
NAO材をベースにスチール成分を10~30%配合したパッドです。NAO材に比べ耐熱性が向上します。
BMWやBENZなどの輸入車に主に採用されております。
スチール成分も少ないので、ローター摩耗も比較的良好です。効き味としては、踏み込んだ分だけ効くような感じです。
絶対的な摩擦係数は後述のセミメタリック系に劣りますが、配合させるスチール素材の繊維状態により、高い効きを発揮できるよう進歩しており、サーキット走行も可能な効きを確保できるようになってきました。また熱伝導性がセミメタリック系に比べ低いという特徴も有しております。
2-3.セミメタリック系
NAO材をベースにスチール成分を30%以上配合したパッドです。
現在サーキット用パッドとして多く採用されています。
耐熱性、高温耐摩耗に優れ、特に高温状態でも高い効きを発揮します。いわゆるフェードしにくいパッドですが、ローター摩耗の増加、鳴きの発生、ホイール汚れの増加などの症状が現れやすくなります。
そこで、いかに高い効きを発揮しながらも、ローターとブレーキコンポーネンツを保護できるかが、各パッドメーカーのノウハウとなります。
2-4.ハイメタリック又はフルメタル
スチール系や銅などの金属系材料だけを使い、樹脂を使わずに高温/高圧下で金属的に組織結合させたパッドです。
樹脂を含まないだけにフェードすることはありません。耐摩耗性に優れ、低温下では初期制動も高く、高温化では安定した効きを発揮します。
レースでは耐久レースなどで主に使われる材質で、新幹線のブレーキにも使われておりました。
弱点としては、快適性を高める防振材や潤滑材が一切含まれないため、大きな鳴きを発生させたり、ローター摩耗を増大させたりすることがあります。
3.カーボンパッド(カーボンコンポジット)
F1に使われるブレーキです。カーボン繊維とカーボンブラックだけを使い、高温で焼き固めたパッドです。
特徴としては非常に軽量で、1,000℃以上の高温にも耐えられます。また高温化でも非常に高い摩擦係数を発揮します。
まさにF1に代表される300km/hオーバーで走行している車両を100mで停止させてしまうほどのストッピングパワーを発揮します。
問題は同時に使うローターも同じカーボン(カーボンコンポジット)で作らなければならないことです。また、低温下では効きが低下し、温度管理が難しいことや非常に高価であることなどがあげられます。
余談として、世間一般で「カーボンメタル」というパッドの材質名が聞かれます。
専門的に分類しますと、それに含まれるスチール成分に応じて「ロースチール系」と「セミメタリック系」に分類されます。
パッドというものには実はカーボンという材料(元素記号:C)は多かれ少なかれ必ず含まれております。
そのカーボンが何を目的として配合されているのか、がポイントになります。
大別しますと、高温下でも高い効きを発揮させるように配合されるのが「カーボン繊維」であり、摩擦係数の安定化を目的として配合されるのが「カーボン粉末」であります。
一般的には「カーボンメタル/カーボンメタリック」というと、サーキット走行可能な高い耐フェード性と、高い効きをもったパッドというイメージです。そもそもこのカーボンメタルというパッドが叫ばれるようになったのは、先ほど述べましたF1でも使われているカーボンコンポジットパッドの特性を一般市販車にも活かそうという発想から生まれたものです。パッドに配合されるカーボン材料をローター表面になじませることで、皮膜を形成し、擬似的にカーボンパッド/カーボンローターの高い効きを発揮させようと意図したところに由来します。